(2023/01/04 更新) Waydroid 公式のイメージが LineageOS 18 / Android 11 系に更新されたため、以下の内容のうちビルドプロセスについては不要になった。

ちなみに私はウマ娘をプレイしたことがない。したがって、確認しているのはアプリの起動・オープニングムービーの表示までである。
背景
知られている通り、Android カーネルはほぼ Linux そのものである。これを逆手に取り、Linux カーネルで Android を動かそうと試みた賢い人々がおり、結果として以下のような形に結実した。
これまでも単なる Android エミュレータなら無数にあったが、Waydroid はエミュレーションという手法を慎重に避ける。代わりにlxc
で立てたコンテナ内で Android を動かすアプローチを取っており、これに伴って以下のメリットがある。
- ネイティブハードウェアの活用による省リソース化
- ホストシステムとのシームレスな統合
さて、単に Waydroid を動作させるだけなら公式の手順を参照すればよいが、ここでは公式イメージ(Lineage 17 / Android 10)ではなく開発版イメージ(Lineage 18 / Android 11)をビルド・導入する手順を書く。なぜならウマ娘の動作には Android 11 のイメージが必要だから(後述)。
手順
実験環境
key | val |
---|---|
OS | Arch Linux |
CPU | Intel Core i7-11700K |
RAM | 32GB |
GPU | AMD RX6600XT |
Kernel | 5.19.6-zen1-1-zen |
Waydroid | v1.3.0 |
通常の Android のビルド環境、および Waydroid 本体(イメージを除く)の導入は済んでいるものとする。
要求環境
- 250GB 以上の空き容量
- 根気
- Linux 環境
- Wayland 環境
- それなりの速度のネットワーク
- (できれば)コア数の多い CPU
1. イメージ作成
親切なことにビルド手順についても公式ドキュメントが整備されているが、2022 年 9 月時点では LineageOS 17 / Android 10 向けとなっているため、該当部分を修正している。
依存パッケージのインストール
通常の Android(AOSP)のビルド環境に加えて、meson
, simg2img
等が必要になる。
# Arch Linux
sudo pacman -S --needed meson android-tools
# Ubuntu (20.04-)
sudo apt install meson android-sdk-libsparse-utils
このほかにも依存関係があるかもしれないので、ビルドがコケたら適宜インストールする。
初期化・マニフェスト取得
mkdir lineage && cd lineage
repo init -u https://github.com/LineageOS/android.git -b lineage-18.1 --depth 1
repo sync build/make
wget -O - https://raw.githubusercontent.com/waydroid/android_vendor_waydroid/lineage-18.1/manifest_scripts/generate-manifest.sh | bash
ソースの同期
オプションで並列実行を指定しているが、それでもありえん時間がかかる。なんらかの理由により途中で失敗した場合は再実行する。
repo sync -c --no-tags -j$(nproc)
ビルド設定
lunch
の引数は対象の CPU アーキテクチャに合わせる。
. ./build/envsetup.sh
lunch lineage_waydroid_x86_64-userdebug
ビルド実行
メモリが不足する場合コア数を調整する。
make systemimage -j$(nproc)
make vendorimage -j$(nproc)
イメージ形式の変換
simg2img out/target/product/waydroid_x86_64/system.img /your/target/path/system.img
simg2img out/target/product/waydroid_x86_64/vendor.img /your/target/path/vendor.img
できたイメージを適切な場所(たいていは/usr/share/waydroid-extra/images
以下?)に移す。
コンテナ設定
# /etc/gbinder.d/anbox.conf
[General]
ApiLevel = 30
新しいバージョンでは Android 内部の変数を読んでくれるので不要かもしれない。
初期化
ここでいったん Waydroid 環境を初期化しておく。
sudo systemctl start waydroid-container.service
sudo waydroid init
2. GAPPS / ARM 対応
どちらかというと以下が本題である。
ここまででx86_64
のイメージが動作するようになったが、ウマ娘はじめたいていの娯楽アプリは ARM 向けにしか作られていないため、このままでは動作しない。そもそも Play Store すら入っていない。そこで OpenGAPPS と libhoudini を導入する。
- OpenGAPPS
- カスタム ROM に Play Store を導入する際に使われるやつ。
- libhoudini
- Intel が提供している x64-ARM 間の翻訳レイヤ。最近 Windows Subsystem for Android が登場したことで再び脚光を浴びた。
- Android 11 以上にしか対応していない。わざわざイメージをビルドしたのはこれが理由。
導入にあたっては以下のスクリプトが助けになる。
手前味噌ではあるが、以下のフォークでは Android 11 向けにいくつかの点を改善している。こちらを使うことを推奨する。
ここからは流入者のリテラシーを保障するため踏み込んだ説明は避けるが、README のとおり
- OpenGAPPS を導入し
- libhoudini を導入し
- Android ID を取得し、Google のページで登録する
手続きで、Play Store と ARM エミュレーションが動作する。うまくいくと冒頭のような感じになる。
ターミナルの右半分は GPU の使用状況、画面最上部のバーの桃色部分は CPU 使用率をそれぞれ示している。CPU 使用率はごく低く、GPU もハードウェアアクセラレーションが効いているのが確認できる。
結論
本当にすごい時代になった。が、ウマ娘をプレイしていないので特に思うところはない。
補遺
ここまで書くと万能のようだが、動かないアプリも一定数ある。Clash Royale、プリコネ RD などは手元で動作しなかった。さらにいえばブルーアーカイブはストアに表示すらされなかった。透き通るような世界観ってそういうことだったんですか?
原因として考えられること:
- 地域設定
- 一応日本には設定した
- Vulkan が動かない
- Waydroid v1.3.1 で仮サポートが追加されたが、虚無が表示されるなどの不具合がある
- root 化検知に引っかかっている
- Waydroid は root 化された LineageOS を動かしているに等しいため、root 化検知が働いている可能性がある