2022年2月17日

感想: パラニューク『サバイバー』、森見登美彦『四畳半神話大系』

チャック・パラニューク『サバイバー』

✈️

読み終えた。『ファイト・クラブ』(以下、「ファ」)のレイモンド・K・ハッセルくんの場面といい、これといい、パラニュークの描く極限状態はやっぱり美しい。美文というわけではまったくなく、むしろ歪で下品だが、あの饒舌と反復の多いテンポがかえってスペクタクルを書くには向いている。

ただ終盤の展開には「そうなんだ」としか言えなかった。主人公が一人前になるための経験があまりにも古典的な「それ」1 すぎて、この作品がファともどもオルタナ右翼の聖典になっているというのもなんとなく頷ける。おそらくメインメッセージはそれではないのだろうが、それを伝えるためにこういう道具に頼らざるを得ず、そしてしばしば勘違いされてしまうところにパラニュークの奇妙な屈折を感じる。

ファ同様、結末は曖昧で解釈は開かれているが、作者公式の見解もある。個人的にはタイトルの貫徹性と、あくまでパラニュークが肯定の作家であるという信念(期待?)を踏まえて公式見解に与したい。どうでもいいけどヒロインの名前が Fertility なのなんかえっちじゃありませんか

森見登美彦『四畳半神話大系』

🏫

『夜は短し歩けよ乙女』が面白かったので読み始めた。こういう学生生活がしたかったんだが。どうして部屋の中でクネクネしてバカを書いている? どうして偽物の駒場キャンパスは閑散としている? 早く答えろよ

いまや弊学も京大も奇妙に脱臭され(私はこれを「後期資本主義的脱臭」と雑に、定義なく、心の中で呼んでいる)、いよいよ浄化の一途を辿りつつあるなかで、こういう学生生活を描いた小説は懐古される対象になるのかと思うとちょっとつらい。

Footnotes

  1. ヒント:成人通過儀礼